皆さんは、マスクといえば風邪などの病気の時にウイルス予防で使うとか、花粉対策で使用するのが一般的と思いますよネ。
でも、最近は使い方が変わってきているそうですヨ・・・!
皆さんは、『伊達(だて)マスク』という言葉を聞いたことがありますか? 本来の予防・衛生上の目的とは異なり、例えば、ファッション用途や昨今のコミュニケーション方法の変化に応じたり、自己アピールの為にマスクを着用することです。
昔から、保温や保湿の為とか、変装・カモフラージュに使うことは知られていましたが、ここ最近2~3年にみられる現象で社会問題にもなっているのが、いわゆる『伊達マスク』と言われるものなのです。
一種のファッションとして、あるいは「仮面」のような使い方でマスクをかけることなのですが、『伊達眼鏡(だてメガネ)』と同じ捉え方で『伊達マスク』と呼ばれています。ご存知の通り、視力が悪くないのにメガネをすることを『伊達眼鏡』と呼びますが、それのマスク版が『伊達マスク』なのです。
インターワイヤード社のネット・リサーチのサービス「DIMSDRIVE」が2014年3月に発表した調査結果によれば、この『伊達マスク』という言葉を知っていた人は35.3%、内容をそれなりに知っている人に限れば15.2%でした。
驚くべきことに、女性の20代以下の場合は41.2%の人が『伊達マスク』の経験があるそうです。また『伊達マスク』を常にしていて、心理的に手放せなくなっている「マスク依存症」という言葉を聞いたことがある人は20.7%。自分が「マスク依存症である」と答えた人は0.7%でした。
男性より女性に着用者が多い理由は、ファッション感覚で着用しているからか、または自らの容姿・外観を気にするからでしょう。
確かに「化粧をしていない/すっぴん隠し」に便利だし、「小顔に見える」「しみや肌荒れが隠せる」などのマスク美人効果がありますよネ。歯並びも隠せるし、目元だけを意識すれば良いので、これは心強いアイテムです。因みに、最近では「おしゃれマスク」として、子供向けをはじめ色々な商品も発売されています。
マイナーな意見ですが、男性でも「ヒゲを剃り忘れた時や時間が無い時に隠す」などというものもありました。更に『伊達マスク』をしている理由のユニークなものには、「妄想などでニヤニヤしていてもバレない(笑)」というものがあり、『伊達マスク』の意外な使い方といえます。
常に身だしなみに注意したり、お化粧をきちっりと行うのは大変ですし、それが精神的にもストレスとなり得るのは良く理解できますよネ。ですから、この様な理由はまだ健全とも思えますが、問題なのは、男女問わず最近の若年層に共通するもう一つの理由であり、それは、 「人とコミュニケーションを取らないで済む」 というものです。
彼らは、他者に自分の存在を忘れて欲しい時、自分だけの空間、プライベートな世界を手軽に作ることが可能な手段が『伊達マスク』の着用と考えています。感情を読み取られることのない様にマスクを使用すると、コミュニケーションを阻む壁として他人との人間関係の距離を隔ててくれるからです。
つまり身体的なコンプレックスを隠す為に加えて、会話などのコミュニケーションが苦手であり、表現能力が低いことなど、他人との接触を恐れる人にとって、その部分をカバーするための精神的な壁・バリアー的な役割をマスクが担っているのです。
しかし自分を自ら隠し、他者とのコミュニケーションから逃避する手段として『伊達マスク』を使うことは好ましい事ではありません。これは日本独特の一種のトレンドであり心の持ち方のファッション(流行)なのかも知れませんが、国際的には通用しない危険な兆候です。
当然ながらマスクを付けると自己表現力はより低下し、ディスコミュニケーション状態に陥る可能性があるからです。結果として他者とコミュニケーションをとることが更に出来なくなり、よりコミュニケーション力の低下に繋がる負のスパイラルに入り込んでしまいます。
そして東日本大震災以降は特にマスクを装着することが広く社会的に是認されるようになった為、常用着用のハードルはより低くなりました。
そこで、『伊達マスク』の着用が常用となり、精神的にも物理的にも手放せない状態のことを「マスク依存症」と呼んでいます。依存症になると、いかなる時もマスクを外すのが怖くなり、睡眠や入浴、食事の時以外ではまったくマスクを外さないという人も増えているようです。
ここまでくると、精神的な障害、例えば社会不安障害(SAD:Social Anxiety Disorder)といえるでしょう。
最後に、識者の声を幾つかご紹介します。
『伊達マスク』の存在が明らかになったのは、博報堂生活総合研究所の原田曜平氏が著書である「近頃の若者はなぜダメなのか」(2010年1月16日発売)で取り上げていたことが発端のようです。
彼は「メールやSNSなどネット上のコミュニケーションに慣れた若者が『伊達マスク』をするようになっている。人間のコミュニケーションは本来、言葉つきや相手の表情を含んでとられるものだったが、携帯やパソコン上の文字だけのコミュニケーションでは、そのような要素がないため、互いに本音を隠したままでことを進めることができる。それに慣れてしまった若者たちは、まず自分の本音を他人に知られることが怖い。そして自分の弱みを知られることを嫌うのではないか」と指摘します。
その後、朝日新聞が2011年1月に日本の男女10代の世代にそうした傾向が見られることを報じて、同紙の取材で年代を問わず大人の中にも『伊達マスク』着用者が存在することが明らかになりました。
国際医療福祉大学臨床心理学専攻教授で教育評論家の和田秀樹氏は、「リアルなコミュニケーションを避けるのは、社会不安障害に近い症状で、マスクは、引きこもりにならないよう何とか外に出るための一種の防衛装置である。表情を読まれないことに慣れると癖になってしまう。」と語っています。
聖学院大学人間福祉学部の山田麻有美准教授(心理テスト研究)によると、「このマスクには他者の目に対する強い意識を感じる。かつてのガングロや目力メークに通じるものだと思う。」とのことです。
ちょっとしたファッションの一環として使用するレベルで留まるならば、『伊達マスク』も楽しいおしゃれアイテムといえるでしょう。しかし、一線を越えてコミュニケーションを避けるための道具となると、これは大問題です。「マスク依存症」とならない為に充分注意が必要であり、既に依存状態にあると思われる場合は、適切な処置・対応を心掛けてください!!
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