想い出のアニメ(4) 『坂道のアポロン』 〈44JKI15〉

では、ここらでちょっと脱線して、劇中に登場するモダン・ジャズの名曲を紹介してみましょう。

 

【アニメ各話のサブテーマとなっているジャズの名曲】

 

モーニン141FZFS91VQL

第1回 モーニン(Moanin’

最初の回で薫が覚えることになるブレイキーとJMの大ヒット曲で、この物語を通してのテーマともいえます。最終回のセッションにも出てきます。また、薫はこのレコードを律子の家(レコード店)で購入していました。

 

第2回 サマータイム(summertime

直接は劇中に出てきませんが、この回のサブテーマ曲に選ばれたのは夏場に海辺に皆で遊びに行く場面があるからだと思います。またこの曲は、ジョージ・ガーシュウィンが1935年の歌劇『ポーギーとベス』のために作曲したアリアです。

 

ビル・エヴァンス771dFfKovRmL._SL1199_第3回 いつか王子様が(Someday My Prince Will Come

薫が律子に(告白の為に)聴かせる曲、それもビル・エヴァンスの演奏イメージで。またこの曲は、1937年のディズニーアニメ映画『白雪姫』 の挿入歌です。ちなみに、薫が前髪を上げるとビルに似ているらしい。

 

チェット・ベイカー18194ywDBBNL._SL1500_第4回 バット・ノット・フォー・ミー(But not for me

米兵相手の酒場で、淳一(ペット)と薫がチェット・ベイカーのスタイルをデュオで演奏。いかにもチェット・ベイカー=淳兄(じゅんにい)は女子にモテそうな奴ですネ。イケメンでトランペット吹いて、歌も上手いんですから・・・。

 

クリス・コナー141cdW0Lh0vL第5回 バードランドの子守唄(Lullabys of Birdland

再会した母親に薫がプレゼントするLPが、クリス・コナーの『バードランドの子守唄』。しかしこの曲ならば、サラ・ヴォーンと(我が最高のトランペッター)であるクリフォード・ブラウンのコラボ版もグッド!!

 

第6回 ユー・ドント・ノウ・ホワット・ラブ・イズYou don’t know what love is

劇中には使われていません。元々はミュージカル映画の挿入歌ですが、コルトレーンのアルバム『バラード』や同じくテナーの巨頭ソニー・ロリンズの『サキソフォン・コロッサス』での演奏が有名、歌唱ではビリー・ホリデイが『レディ・イン・サテン』で取り上げています。

 

ナウ181ImmipOnWL._SL1500_第7回 ナウズ・ザ・タイムNow’s the time

この曲自体は劇中には出てきません。「今がその時」という意味の、チャーリー・パーカーの名曲です。文化祭での薫と千太郎の共演の場面が、「今がその時」なのでしょう・・・。

 

第8回 ジーズ・フーリッシュ・シングス(These foolish things

劇中には使われていません。1935年にロンドンでの演劇『Spread It Abroad』の為に作曲されたスタンダード曲で、ジャズ・ミュージシャンのカバーは数多くあります。

 

第9回 ラヴ・ミー・オア・リーヴ・ミー(Love me or leave me

この曲も直接は劇中には出てこないと思いますが、律子に対する薫の心情が表れています。1928年のミュージカル『Whoopee』の挿入歌。1955年にはドリス・デイがこの曲を歌ってヒットしました。独特のコード進行が特徴で、これをもとにジョージ・シアリングが前出の「バードランドの子守唄」を作っています。インストでは、マイルスの『ウォーキン』での演奏が有名ですが、個人的にはレスター・ヤング&テディ・ウィルソン・カルテット版も好きです。

 

第10回 イン・ア・センチメンタル・ムード(In A Sentimental Mood

ヂューク(公爵)・エリントンの名曲ですが、この回では薫や律子の気持ちを表現している楽曲です。ちなみに筆者は、カウント(伯爵)ベイシーも大好きです。

 

マル1410pIWFGWWL第11回 レフト・アローンLeft Alone

この曲は亡くなったビリー・ホリデイへ捧げる曲で、千太郎は失踪、ひとり取り残された薫の気持ちがこのレフト・アローンなのでしょうか。余談ですが、筆者はこの曲でアルト・サックスを吹いているジャッキー・マクリーンが大のお気に入りです。

 

第12回 オール・ブルースAll Blues

マイルス・デイビスのアルバム『カインド・オブ・ブルー』B面の1曲目の曲でモード奏法で演奏されます。8分の6拍子で12小節のブルース形式であり、ポール・チェンバースのベースが印象的な曲です。

 

その他としては、前半で皆でセッションした「バグズ・グルーヴ」や酒場での一曲目でホレス・シルバーのファンキーな名曲「ブロー・イン・ザ・ブルース・アウェイ」、律子が文化祭で歌う予定だった「マイ・フェイヴァリット・シングス」などが著名曲です。「バグズ・グルーヴ」は、マイルスとモンクの喧嘩セッション(本当は違うらしい)で有名。「マイ・フェイヴァリット・シングス」はミュージカル『サウンド・オブ・ミュージック』の中のスタンダード曲ですが、劇中ではコルトレーンのLPジャケ写がちらりと出てきます。

↓『坂道のアポロン』オリジナル・サウンド・トラック紹介サイト(試聴あり)
http://www.apollon-jazz.com/

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