【モンスターSLを追え!!】 第1回 SPのキャブフォワード 〈17JKI00〉

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SP キャブフォワード 静態保存機#4294

狭軌(国鉄/JRの場合は1,067mm)の日本では車体の規模に限界があったが、標準軌(1,435mm、日本では新幹線や京急など)以上の諸外国には我が国ではとてもありえない様なモンスター級の蒸気機関車(SL)が多数生息??していた。

ゲテモノ好きで変わったものが大好物な人の為に、怪物SLを紹介していくシリーズの第1回目は、米国サザンパシフィック(SP)鉄道のキャブフォワードだ!!

 

SPのキャブフォワード

その巨大さに圧倒されるだけでなく、キャブ(運転室)が最前部にあるという変わった形態にも驚かされる。正面から見ると、まるで「ロボ・コップ」といった趣で、見方によっては可愛らしくもあり、ひたすら奇異でもある。とにかく日本人の常識ではSLとは思えない外観をしている。

サザンパシフィック鉄道(Southern Pacific Railroad、略称SP)は、米国の巨大鉄道の一角として、全盛期には南西部から西海岸全域に路線網を展開した鉄道である。経営破綻から既に消滅し現在はユニオンパシフィック鉄道(Union Pacific Railroad、略称UP)に吸収合併、統合されている。またSPは、随分と後年までSL(GS-4などが有名)を使用したことでも知られている。

キャブフォワードの誕生の理由は、SP路線の最大の難所の一つ、シェラネバタ山脈越えの区間にあった。

急勾配が長距離にわたり続く大陸横断路線では、当初、コンソリデーション(日本だと代表的なものは国鉄の9600「キューロク」形式蒸気機関車あたり)といわれるタイプのSLを5~6重連にして列車を牽引していたが、より強力でハイスピードが出せる機関車を求めたSPはマレー式(複式連接型)SLの導入を決定した。

山岳地帯ではカーブの最小半径も小さく、機関車のホィールベースが制限され従来型の機関車の大型化は困難であった。まるで2両の機関車が合体したように二組の走行(走り)装置を持ち前部が左右に首を振る構造のマレー型の試験は良好だったが、その排煙が乗務員たちを悩ませた。

長いトンネルや冬場のための雪崩除けが連続している区間では煙と排気の熱で運転士たちは窒息しかねない状態に晒されたのだ。しまいには乗務員が運転をボイコットする事態に至り(呼吸装置をキャブに備えてみたが効果はほとんど無かった)、この状況に苦慮したSPは解決策はキャブを煙突より前位にすることとの結論を得て、先ずは単純に機関車のバック運転を試みたが、これは安全面での問題があり、次に通常のSLの設計のままキャブ位置を煙室の前位に移動する設計を検討したが騒音や振動がひどく却下、そして試行錯誤の結果、機関車の向きを反対にしテンダーを煙突側に連結する設計が採用された。

これは燃料に石炭ではなく重油を使用していたSPだからこそのアイディア(テンダー内のタンクから液体の燃料油を前位の機関車にパイプを通じて送る方法、当時の技術では固形物の石炭では困難)とも言える。後にマレー式からよりパワーとスピードが出せる単式連接型SLに切り替わったキャブフォワードは1944年のAC-12形式まで合計256両が製造された。そして本来、山岳線用に開発されたキャブフォワードだが、後にはSP全線で活躍した。

 

↓下記はいずれもキャブフォワードの活躍する動画

提供:Pentrex Railroad Videos

 

SPの沿線では石油が豊富に産出していた為、石炭より油を燃料とすることが調達のし易さやコスト的にも有利とされたことがキャブフォワード導入の一因である。

AC-9形式のみシエラ線区では使用されなかったタイプで、通常の(キャブフォワードではない)キャブ位置の単式間接型SL。

尚、最終のAC-12形式の1両である#4294は、カリフォルニア州鉄道博物館に静態保存されている。ちなみに、カリフォルニア州鉄道博物館では「キャブ・イン・フロント」と呼称している。

 

↓SP4043の写真 

Locomotives: SP 4034(2-8-8-2) Date: 11/25/1937 Location: Alturas, CA』へのリンク

古い形式のキャブフォワードで、 この写真では牽引しているテンダーに特徴があり、ホエールバック(鯨の背中)というカマボコ型の(油焚きならではの)タイプだ。

 

このキャブフォワード、あまたある米国の鉄道の中で何故かSPだけにしか採用されなかった。山岳路線での効果が明確ではあっても、油焚きが前提のSLだからと思われるが・・・。それにしても、このフロントフェースは愛嬌があるでしょ!! デカさもハンパないんだけど・・・。

-終-

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