皆さんは、”駅で電車を待っていたら、いつもと見慣れない電車が入ってきた”。そんなご経験はないでしょうか?今回は、見慣れない電車の中でも、JR東日本の「mueトレイン」をご紹介します。初めてその名前を聞かれた方が多いと思いますが、この電車、いったい何者なのでしょうか?
鉄道オタクの方々はご承知でしょうが、この電車の正体は「試験車」と呼ばれるもので、車両の性能や状態を試験するための専用の電車です。有名なところでは新幹線に「ドクターイエロー」というのがありますが、その仲間と思っていただいても良いでしょう。この電車はもともと京浜東北線を走っていた「209系」という通勤車両の改造車で、2008年に誕生しました。ドアが4つ付いている点が、通勤電車だった痕跡とわかりますが、ブラインドがおろされているので、車内の様子はあまりよく見えません。(実際は車内のシートは殆ど撤去されて、試験装置やパソコンが並んでいます)編成は6両です。
では一体、どんな試験をしているのでしょうか。mueトレインの「mue」とは、MUltipurpose Experimental Train(多目的試験車)の略称です。多目的試験の名の通り、この電車では様々な試験が行われています。例えば、車両の性能向上に関する試験。乗り心地であったり、ブレーキの性能であったり。また、情報案内をより早く行うために、Wimaxの検証なんていう試験も行われます。そのほか、車両をコントロールするためのシステム開発。モーターやブレーキなどの装置や、状態を監視する装置の開発も行われます。新型の電車を作る時や、列車を動かすためのシステムが変わった時などの試験といった役割を大きく担っている電車なのです。通勤電車を試験車に改造することによって、従来は専用の車両や設備で行っていた各種の試験を、一般の営業車両に限りなく近い形で行うことにより、早い実用化が期待できるわけです。
特徴ある車体の色は、明るい未来や希望を表現する「白」に、多くの分野の光り輝く新技術が集結して新しい鉄道技術を構築するイメージをブロックパターンで表現しているそうです。ハイテクの塊といってもいい車両にふさわしいカラーデザインのコンセプトが良く表れていますね。車体に描かれたロゴマークも斬新で、「この電車には何かある!」と思わせる感じがします。
mueトレインは、いまだに鉄道オタクの間でも、ネットに目撃情報などが流れるなど非常に珍しい電車で、神出鬼没といっても過言ではありません。皆さんももし、どこかの駅で見かけたら、写真を撮っておくことをお勧めします。きっと何か珍しい事が起きるかもしれませんよ。