「コーヒー界のアップル」とか「フェラーリ並みのコーヒー」、「サードウェーブ(第三の波)コーヒー」などと呼ばれているコーヒー店がある。
アメリカ西海岸発祥のブルーボトルコーヒーのことだが、そのコーヒー店がいよいよ日本進出を決めた!!
その名の通り、青いボトルのロゴマークが印象的な「コーヒー界のアップル」こと、全米で大人気のコーヒーショップチェーン、それがブルーボトルコーヒー(Blue Bottle Coffee)だ。このコーヒー店が、いよいよ日本にも進出して来るそうだ。
【ブルーボトルコーヒー】
元クラリネット奏者だったジェームス・フリーマン(James Freeman)が、芽が出なかった音楽家活動を引退し、2002年8月に「本当においしいコーヒーの提供」をするべく開業したコーヒー店だ。彼は元々コーヒーが大好きだったそうで、最高の一杯を創るべく起業したという。
当初はサンフランシスコの東、オークランドの自宅アパートで自らコーヒーの焙煎を始め、近隣バークレーのファーマーズ・マーケットでそのコーヒーの販売を開始した。港町の倉庫街に焙煎所を建てて、その後、サンフランシスコにあるガレージを借りて常設のコーヒーショップを開設したのだ。
ビジネスの拡大は比較的ゆっくりとしているが、2010年にはニューヨークに進出し、現在は東海岸に7店、西海岸に6店と、計13店を展開している。また、ブルーボトルコーヒーは焙煎所の設営とカフェ店舗の展開だけでなく、コーヒー豆そのものや、各種のコーヒー関連の物品販売事業も積極的に展開している。
注目すべき点は、ブルーボトルコーヒーはあくまで普通の食品・飲食業であり、決してITC関連の有望事業でもないのに、グーグル・ベンチャーズ(Google Ventures)などの高度な最先端テクノロジー企業へ投資しているベンチャーキャピタルや、既にIPOやバイアウトなどを済ませた起業家たちが顔を揃え、この新しいコーヒー会社に相次いで投資していることだ。
【その特色・特徴】
その特徴のひとつは、コーヒーを一杯ずつ丁寧に淹れる「マイクロ・ブリュー・コーヒー」だ。ブルー・ボトル・コーヒーのコンセプトは個人の香りがするコーヒーチェーンだ。 従来の大型コーヒーチェーンは確かに味はうまいが、画一化されている。しかしコーヒーはもっと手間を掛け、心を込めて淹れる物で、 マニュアル化され効率化を求めるものではない、とフリーマンは考えた。
コーヒー豆を厳選することは当然、焙煎後には48時間以内に使い切ること、そして豆を挽いてから45秒以内に淹れることなど、そのこだわりから生まれた香り高い味が、多くのファンを魅了している。また浅煎りのシングルオリジンで、爽やかな柑橘系が香り立つコーヒーの提供などが特色でもある。
そして、ブルーボトルコーヒーは創業以来、フレッシュネスやホスピタリティ、サステナビリティを社是としてきた。
透明性やトラサビリティも重要視しており、どの地域で生産され、どのようにウォッシュされたコーヒー豆なのか? 誰がどのようにして焙煎したのか? どんな淹れ方なのか? 等々について顧客と充分にコミュニケーションできる場を創るのが優先課題のようだ。
ブルーボトルコーヒーでは、コーヒーが主役で、コーヒーを供すバリスタとコーヒー好きな顧客がコーヒー談義をするようなカフェを目指している。店の出店場所も充分に吟味して、その都市のトレンディで面白い所を選ぶようにしているとのことだ。
【成功の秘訣】
むやみにカフェ店舗網を拡大するのではなくて、核となる焙煎所を中心とした自社のカフェ店舗と、その焙煎した豆を扱う他社のカフェやレストラン等とのネットワークを作り、地域に根ざす強いエコシステムを構築していく手法でビジネスを展開している。
更にブルーボトルコーヒーは、他の大手コーヒーチェーン店と異なり、各店舗が個性を持ち画一化されていない。当該の店舗がその所在する地域に溶け込む為に、各々の店舗に独自のポリシーや特徴がある。地域によっては敢えて店のトーンやスタイル、扱い商品の品揃えを変える様に指示が出されているそうだ。 画一的なチェーン店は品質が保証され価格も手頃だが、全国(世界中)どこにいっても同じ味であり、 差別化を求めゆったりとコーヒー本来の味を楽しみたい層には、今後は敬遠されていくだろう、と考えられている。
価格設定は決して安くはないが、フレッシュでオーガニックなコーヒー豆を軽く焙煎したものだ。味はスターバックスなどの大手コーヒーチェーンのダークで濃い味とは対照的で、柔らかく甘みがある。つまり、コーヒー豆を焙煎し過ぎていないから、苦くなく、甘味のあるマイルドな味となっている。
この様に、ブルーボトルコーヒーの成功の秘訣は、アメリカでは欠落していることの多い、徹底したカスタマーサービスとこだわりの味で、個性豊かな店舗を展開していることだ。
【サードウェーブ(第三の波)コーヒー】
真空パックの開発によって世界中で手軽にコーヒーが飲まれるようになったのが、コーヒーの第一の波である。そしてスターバックス、タリーズなどのコーヒーチェーンが、深煎りで苦みを楽しみ、味を重視しながらマニュアル化したのが第二の波とすれば、最高のコーヒーを顧客に提供するというこだわりの味の追及が第三の波だ。ブルーボトルコーヒーをはじめとして、シカゴのインテリジェンシアコーヒー、ノースカロライナのカウンターカルチャーコーヒーなどが代表格だ。
一般的なコーヒーの販売は伸び悩んでいるが、サードウェーブタイプの売り上げは約10 %程度伸長を続けているという 。アメリカの大都市では、産地を厳選したフレッシュなコーヒーが流行っており、これからまだまだ大きく伸びるといわれている。
これは、気軽にコーヒーが飲めるという従来のスターバックスなどと異なり、多少値段が高くても自分好みの美味いコーヒーを求めるという顧客の志向の変化である。日本でも以前はコーヒー専門店といえば、素人や自宅では飲めない大変美味しいコーヒーを味わえる場であったが、近年、大都市ではすっかり見かけなくなってしまった・・・。
【日本への進出】
フリーマンは日本で、アメリカでは見かけないサイフォン式やドリップ式のコーヒーに出合い、接客のレベルの高さも含めて大きな影響を受けた。日本のコーヒー専門店のコーヒーに対する真剣さ、細かな点にも気遣う感性などを尊敬している、という。彼は、米国以上に日本のコーヒー文化は洗練されているとし、また日本製コーヒー道具の品質の高さや、クラフトマンシップを高く評価している。またフリーマンは、銀座のカフェ・ド・ランブル、渋谷の茶亭羽當、表参道の大坊珈琲店などが、東京でのお気に入りの喫茶店だそうだ。
そんなフリーマンのブルーボトルコーヒーは、初の海外進出先として東京を選んだ。今年2014年にはブルーボトルコーヒー・ジャパンを設立し、東京の清澄白河に焙煎所と事務所、カフェ店舗を兼ねた拠点を建設することからスタートする。また米メディアは、同社が東京での事業に500万ドルを投じると報じている。
なんでも清澄白河が、同店発祥の地、アメリカのオークランドの雰囲気によく似ていることも、その理由の様だ。ペストリーに関しては、日本オリジナル商品のリリースも予定しているらしい。
2014年末までの開店に向けて準備を進めており、六本木や渋谷地区への出店も検討している模様だ。日本での販売は未定だが、本場のサンフランシスコにある店舗では、トートバッグやキャップ、パーカーなどオリジナルグッズも販売されて好評である。東京でも販売されれば、こちらも人気がでそうだ。
-終-
【続報】
Blue Bottle Coffee(ブルーボトルコーヒー)の記念すべき第1店舗目の清澄白河店が2015年2月6日にオープンしました。ここは焙煎工場を併設したカフェとして、ブルーボトルコーヒーの日本の拠点となります。更に3月7日には東京・青山にもカフェをオープンすることが発表されています。
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